Anthropicは10月27日、生命科学領域での取り組みの進捗として、BigHat Biosciences、Bristol Myers Squibb(BMS)、Divergence Labs、Enveda、Generate Biomedicines、The Column Group(TCG)の6社との協業における初期成果と、自社による医薬品開発の取り組みを公式ブログで公表した。同社は、医薬品開発の遅れはパイプライン全体の様々な工程に存在するとして、Claudeがどこで開発を加速できるかを探ってきたとしている。発表ではあわせて、希少な筋疾患の治療法開発に取り組む1人創業の企業Mithril Medicineを買収したことも明らかにした。
具体的な事例の一つが、抗体医薬のリード最適化を手がけるBigHat Biosciencesとの協業だ。Claudeが2つの抗体断片リードについて改変案を提案し、BigHatの研究チームが約10週間で約1,010個の変異体を作製・検証したところ、最良の変種は元のリードに比べて10倍以上の結合力を示したという。また一方のリードは溶解性を保てる温度が18℃上昇し、もう一方は凝集する速度が100倍以上遅くなったと報告されている。Anthropicによると、この過程でBigHatが従来使っていた熱安定性・凝集性の評価指標が実態を見誤らせる可能性があることが分かり、Claudeが生データの再分析や新たな評価指標・プロトコルの提案を支援したという。
製造文書や規制申請書類の作成を担うEnvedaの事例では、化学担当者が業務時間の最大75%を文書作成に充てていたとされる。1,061ページのテストセットでClaudeを使ったところ、人間のレビュアーが見つけていた11件の問題を全て検出した上、さらに7件を新たに発見したという。レビューにかかる時間は25時間超から3時間未満に減ったとしている。これらの数値はいずれもAnthropicと提携先企業による自己申告であり、対照群の設定や第三者による検証が行われたとは発表文に記載がない。
AIGNALとしては、今回公表された成果の多くが前臨床段階にとどまり、臨床試験入りが確定した事例ではない点に注意したい。Anthropicは、買収したMithril Medicineが取り組む筋疾患の候補治療について「2028年末にも臨床試験入りする可能性がある」との見通しを示しているが、これは候補物質が今後も良好な経過をたどることを前提とした見通しであり、確定した計画ではない。企業がAIを研究開発プロセスにどこまで組み込めるかを検討する上で参考になる事例群だが、結合力10倍・凝集速度100倍超といった数値はいずれも各提携先の実験室内での比較であり、査読済み論文としての検証を経たものではないことを踏まえて評価する必要がある。
出典: Anthropic



