Anthropicは10月28日、公式ブログで研究支援プログラム「AI for Science」の拡大を発表した。同プログラムは2025年5月に開始され、これまでは個人の研究者がClaudeの無償クレジットを申請して高インパクトな科学研究に使う仕組みだった。今回の発表では、個人への提供を続けつつ、助成財団・研究機関・研究イニシアチブとも新たに連携し、計20の提携先を通じてクレジットを配布・活用する体制に広げたとしている。
発表文が名前を挙げた提携先は18件で、役割によって2種類に分かれる。一つは所属研究者にクレジットを配布する助成財団・学会で、Alfred P. Sloan Foundation、Simons Foundation、Schmidt Sciences、米国化学会(ACS)傘下のCAS、Renaissance Philanthropyが運営する「Open Source for Science Fund」、米国国立科学財団(NSF)が含まれる。もう一つはクレジットを自組織内で活用する研究機関で、Space Telescope Science Institute、Wellcome Sanger Institute、The Francis Crick Institute、インペリアル・カレッジ・ロンドンのLife Sciences学部、EMBL、Gladstone Institutesが挙げられている。これに加え、プリンストン大学のFlyWire、コロンビア大学のLEAP、ジョンズ・ホプキンス大学のAstroPath、ブロード研究所のgnomAD、Tau Ceti、オーストラリアのCentre for Population Genomicsといった個別の研究プロジェクト・イニシアチブも名を連ねる。
発表文によると、NSFは1950年設立で米国の大学における基礎研究支援の約4分の1を担う年間予算90億ドル規模の機関、gnomADは80万人超のゲノムデータを扱うデータセットだという。これらは機関・データセットの属性としては確認できる情報だが、「研究者がClaudeを仮説生成・実験設計・データ解析に使っている」という利用実態の記述は具体的な人数や事例数が示されておらず、Anthropic側の説明にとどまる。クレジットの金額、申請・選定の基準、提供期間といった実務上重要な条件も発表文には記載がなく、今回時点では確認できない。
発表文は「AIは科学的進歩を大きく加速させる可能性がある」という見方や、連携先のひとつであるAllen Instituteについて「数カ月かかる手作業の解析を数時間に短縮する」といった表現を使っているが、これらはAnthropic側の見込み・期待であり、実測された成果ではない。発表文自身も「多くの連携はまだ初期段階にある」と述べており、具体的な成果はこれから検証される段階にある。
AIGNALとしては、今回の変化の核心は「個人申請」から「所属機関経由」への導線追加にある点に注目したい。これまでAI for Scienceは研究者個人が直接Anthropicに申請する仕組みだったが、今後は所属する大学・研究機関や、助成を受けている財団がすでに提携先リストに入っていれば、その窓口を通じてクレジットにアクセスできる可能性がある。ただし配布量や選定基準が非公開である以上、個々の研究者やチームが「具体的にどう申請すればよいか」は今回の発表だけでは判断できず、提携先として名前が挙がった機関・財団に直接問い合わせる必要がある点には注意したい。



