Anthropicは9月25日、自社の研究サイトにゲスト投稿を公開し、社内の物理学者2名(リアム・フィッツパトリック氏、シッダールタ・ミシュラ=シャルマ氏)がClaude(Fable 5.1)を使い、平面N=4超対称ヤン・ミルズ理論における6粒子散乱振幅を「9ループ」まで計算したと発表した。これは理論物理学者マット・フォン・ヒッペル氏が8月7日に出していた公開課題――入手容易な計算資源だけで、N=8超重力理論なら7ループ、N=4超対称ヤン・ミルズ理論なら9ループの振幅を求めよ――に応えたもので、2023年にスタンフォード大のランス・ディクソン氏が達成した8ループの記録を1ループ更新する結果となった。
計算にはPythonとSymPyパッケージを使った「ブートストラップ法」を採用。有料の科学研究プラットフォーム「Claude Science」上で、主となる直接法には96基のCPUを約1週間稼働させ、費用は約100ドルに収まった。ディクソン氏が2023年に用いた間接的な手法(フォームファクター経由)による独立した検証も並行して実施し、2つの手法を合わせた総費用は1000〜2000ドル程度だったという。この結果にコメントしたディクソン氏は「計算の手順に少しでも誤りがあれば、全体が総崩れになってしまうほど繊細な作業だ」と、計算の脆さを指摘している。
Anthropicによれば、同じ週に中国科学院のチームもGPT-6の支援を受けて同じ9ループの目標に到達したと報告されており、これまで専門家が何年もかけて取り組んできたフロンティア級の理論物理計算が、個人の研究者でもごくわずかな追加コストで手が届く領域になりつつあることを示す一つの節目だとしている。



